古代の知恵で、現代をしなやかに生きる。
タイの伝統的な健康法は、何世代にもわたり受け継がれてきた知恵の結晶です。現代社会のストレスや不調に対抗するために、これらの方法を取り入れてみませんか?今回は、タイ式ヨガ「ルーシーダットン」、伝統医学「モー・ボラン」、そして「タイハーブ療法」の3つの健康法をご紹介します。
【1】ルーシーダットン(タイ式ヨガ)
ルーシーダットンは、「ルーシー(修行僧)」と「ダットン(自己整体)」という言葉から成る、タイの伝統的な健康法です。古くは修行僧たちが山中での厳しい修行の合間に、心身の不調を整える目的で行っていたと伝えられています。
この健康法は、インドのヨガや中国の気功と並ぶ、東洋の代表的な伝統療法の一つとして知られており、独特の呼吸法と緩やかな動作を組み合わせたポーズを通じて、心身のバランスを整えることが目的です。
また、タイの伝統医学「モー・ボラン」の一環としても体系化されており、国内外で多くの人々に実践されています。
<1-1>発祥・現地での様子
ルーシーダットンは修行僧の間で生まれ、長い歴史の中で民間にも広まりました。現在ではタイ保健省が推奨する公式の健康法として、国立のマッサージ師養成学校などの教育機関で必須科目に採用されています。
また、タイ古式マッサージの総本山であるバンコクのワットポー寺院では、マッサージ師が日常的にルーシーダットンを行っており、実践の場としても象徴的な存在となっています。
<1-2>ルーシーダットンの特徴
- 独自の呼吸法
ポーズに合わせた呼吸が基本となっており、動作中に「吸う」、ポーズをキープする間に「息を止める」、元の姿勢に戻る際に「ゆっくり吐く」というリズムを繰り返します。 - 下半身を中心にした動き
多くのポーズは「足を刺激して鍛える」ことを目的としており、全身の血流やエネルギーの流れを活性化させます。
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<1-3>ルーシーダットンの主な効果
◎ 血液・リンパの流れを促進
呼吸と連動した動作によって血流が改善され、酸素や栄養素の循環がスムーズになります。また、リンパの流れも活性化され、老廃物の排出が促進されます。
◎ 痩身・ダイエット効果
体の歪みを整えることで代謝が高まり、脂肪の燃焼が促進されます。継続的な実践により、体の内側から引き締まる感覚を得られます。
◎ 自律神経を整える
深い呼吸を伴うことで心が落ち着き、交感神経と副交感神経のバランスが整います。ストレス解消や睡眠の質の向上にもつながるとされています。
【2】タイ伝統医学(モー・ボラン)
モー・ボランとは、「モー=医師」「ボラン=古代の、伝統的な」という意味を持ち、直訳すると「伝統医」となります。タイに古くから伝わる自然療法を体系化したもので、タイ仏教やアーユルヴェーダ、中国医学などの影響を受けながら独自に発展してきました。
現代でも「自然との調和」を重んじ、病気の原因を単に症状だけでなく、心身全体のバランスや生活環境にまで目を向けて診断・治療を行うのが特徴です。
<2-1>発祥と現地での活用
タイ伝統医学は、古代王朝時代から宮廷医療として発展し、後に寺院や地域の施療所などでも普及しました。中でもバンコクのワットポー寺院には、タイ伝統医学の知識が石碑に刻まれて保存されており、ユネスコの「世界記録遺産」にも登録されています。
現在ではタイ保健省によって正式な医療体系の一つとして認められており、現代医療と併用されるかたちで病院やクリニックでも活用されています。地方の診療所やマッサージスクールでは、モー・ボランの知識を学び、資格を取得する制度も整備されています。
<2-2>モー・ボランの特徴
- 総合的な診療
身体だけでなく、心や環境、食生活まで含めたホリスティックな視点で診察・施術を行います。 - 複数の療法を組み合わせる
タイ古式マッサージ、ハーブ療法、温熱療法、食事療法、精神療法などを症状や体質に応じて柔軟に組み合わせます。
<2-3>モー・ボランの主な効果
◎ 慢性的な疲労や体調不良の改善
根本原因にアプローチするため、マッサージや食事指導により体質改善が期待できます。
◎ ストレスの軽減
身体と心の両方に働きかける施術により、深いリラクゼーションをもたらします。
◎ 予防医学としての活用
病気になる前に未然にバランスを整える「未病」の概念に基づき、健康維持や体調管理にも有効です。
【3】タイハーブ療法
タイハーブ療法は、タイに自生する植物の薬効を活用した伝統的な自然療法です。古代より生活に根づいてきたこの療法は、タイ伝統医学の一部として発展し、現代でも家庭やスパ、医療現場で幅広く利用されています。
熱帯気候の恵みにより、多様な薬草が育つタイでは、それぞれのハーブに固有の効能があるとされ、病気の予防や体質改善、リラクゼーションに用いられています。
<3-1>発祥と現地での活用
タイハーブ療法は、仏教寺院や王宮の医師によって古くから体系化されてきました。現在では、国立のハーブセンターや大学、スパ・ウェルネス業界でも積極的に研究・実践が進められています。
また、ハーブボール(温湿布)やハーブスチーム(ハーバルサウナ)といった形で、タイ式マッサージと組み合わせて提供されることが多く、観光客にも人気です。
<3-2>タイハーブ療法の特徴
- 多彩な使用法
煎じ薬、ハーブティー、スチーム、入浴剤、オイル、外用薬など、ハーブの使い方は非常に多岐にわたります。 - 食と医療の融合
タイ料理にも多くのハーブが使われており、日常的な食生活を通じて自然と健康を維持する知恵が息づいています。
<3-3>タイハーブ療法の主な効果
◎ デトックス(解毒)作用
体内の老廃物排出を助け、むくみや便秘の改善、体質の正常化に効果的です。
◎ 免疫力の向上
レモングラス、ガランガル、ショウガなどに含まれる成分が体を温め、自然治癒力を高めます。
◎ 美容・アンチエイジング
抗酸化作用のあるハーブが肌の老化を防ぎ、内側からの美しさをサポートします。
【4】タイ式スチームサウナ(ルアン・ポーイ)
タイ式スチームサウナ(ルアン・ポーイ)は、蒸気にハーブを取り入れた伝統的な蒸し風呂です。主にレモングラス、ショウガ、カフィアライム、ターメリックなどの天然ハーブを煮出して蒸気を浴びるのが特徴。熱いだけでなく、リラックス効果・呼吸器へのアプローチ・美肌効果などが期待されます。
🔽他国のサウナとの違い:
比較項目 | タイ式スチームサウナ | フィンランド式サウナ | 韓国のチムジルバン |
---|---|---|---|
温度 | 約40〜50℃の低温多湿 | 約80〜100℃の高温乾燥 | 低〜高温の部屋が複数あり |
湿度 | 非常に高い(ハーブ蒸気) | 非常に低い(乾燥) | 施設によりさまざま |
特徴 | ハーブを使った香り・薬効重視 | 熱で血行促進・汗をかく | 岩盤浴・多機能型施設 |
利用目的 | 美容・リラックス・体調回復 | 体力回復・精神統一 | 家族レジャー+美容 |
<4-1>発祥・現地での人気
「ルアン・ポーイ」と呼ばれるタイの伝統的なハーブサウナは、寺院や農村の共同施設、スパなどで体験できます。出産後の女性が体調を整えるために利用する文化もあります。観光客向けのスパでも人気のメニューです。
<4-2>効能
- 発汗によるデトックス効果
- 呼吸器系の浄化とリラックス
- 肌のトーン改善とハリ感アップ
- 血行促進と冷え性改善
<4-3>自作レシピ
①作り方
材料: レモングラス、バイマックルー(こぶみかんの葉)、ショウガ、ターメリック、カミツレ(カモミール)など
材料を鍋に入れ、水を加えて煮出す。湯気が立ってきたらバスタオルなどでテント状に覆い、その中でハーブ蒸気を浴びる。
②使い方
10〜15分程度、蒸気を顔や体に当てる。長時間は避け、様子を見ながら行う。週1〜2回が目安。
③保存方法
煮出したハーブ液はその日のうちに使用。使い終わったハーブは乾燥させて入浴剤として再利用可。
【5】ハーバルボール療法

<5-1>発祥・現地での人気
タイの伝統医療に基づく「ハーバルボール」は、布に包んだ複数のハーブを蒸し温めて体に押し当てるマッサージ法。タイのスパやトラディショナルマッサージ施設では定番で、疲労回復、美肌、冷えの改善に用いられます。セルフケアとして家庭でも使用する人が増えています。
<5-2>効能
- 筋肉の緊張緩和と血行促進
- 発汗によるデトックス
- 肌の新陳代謝促進
- 香りによるリラックス効果
<5-3>自作レシピ
①作り方
材料: レモングラス、ショウガ、カフィアライム、ターメリック、こぶみかんの葉などを乾燥させ、布で包んで糸で縛る。
②使い方
蒸し器で10〜15分加熱して温め、気になる部分に押し当てながらマッサージ。
③保存方法
使用後は乾燥させて再利用(約3〜4回まで可能)。冷蔵庫保存推奨。
📌タイで使用される主なハーブの効能早見表
ハーブ名 | 主な使用部位 | 主な効能(体用) | 主な効能(顔用) | 使用部位(顔/体) | その他用途・特徴 |
---|---|---|---|---|---|
タナカ(Thanaka) | 木の皮 | 日焼け止め、肌荒れ予防、消炎 | 美白、皮脂抑制、抗菌、ニキビ予防 | 顔に最適 | ミャンマー発祥。タイ北部で定着 |
タマリンド | 果肉 | 血行促進、角質ケア、くすみ改善 | 保湿、美白、トーンアップ | 顔・体両方 | 酸味成分でピーリング効果。パックにも◎ |
レモングラス | 茎・葉 | 消化促進、筋肉の緊張緩和、消臭 | 毛穴引き締め、肌をすっきりさせる | 顔・体両方 | スチームやハーブボール、サウナに幅広く使用 |
バイマックルー(こぶみかんの葉) | 葉 | 血流促進、デトックス、虫除け | 毛穴洗浄、皮脂コントロール | 顔・体両方 | サウナ、マッサージ、料理でも使われる |
ショウガ(ジンジャー) | 根茎 | 血行促進、冷え改善、発汗 | 血行促進、肌代謝促進 | 体向き | 温感作用が強いため、顔には刺激が強めの場合あり |
ターメリック(ウコン) | 根茎 | 抗炎症、抗菌、関節痛緩和 | 美白、抗酸化、ニキビケア | 顔・体両方 | 顔用は微量を推奨。黄色色素が肌に残ることあり |
カミツレ(カモミール) | 花 | リラックス、抗炎症、安眠促進 | 肌荒れ改善、鎮静、敏感肌向け | 顔に最適 | お茶、ローション、スチームとしても人気 |
カフィアライム | 果皮・葉 | 発汗促進、消臭、虫よけ | 皮脂ケア、肌のクレンジング | 顔・体両方 | 香りも強く、精神安定効果もある |
📌タイのマッサージ:
癒しの本場・タイの伝統マッサージ完全ガイド|心と体を整える4つの施術法
📌タイの健康法:
タイ伝統の健康法3選|ルーシーダットン・モー・ボラン・ハーブ療法で心と体を整える
📌タイの美容法:
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