手技療法とは、薬や器具を使わずに、施術者の手を使って体に直接働きかける治療法のことです。主に筋肉や関節、神経系へアプローチし、痛みを和らげたり、機能を回復させたりすることを目的としています。日本では「徒手療法」とも呼ばれ、柔道整復術の基礎にもなっています。世界各地で独自に発展し、今も多くの人の健康維持に役立っています。
手技療法の起源と歴史
手技療法の歴史は古代まで遡り、各地で異なる形で発展してきました。
- 中国:紀元前の「黄帝内経」に按摩療法の記述があり、春秋戦国時代には治療法として確立されました。推拿(すいな)は今も受け継がれています。
- インド:アーユルヴェーダの考えに基づくマッサージ療法が古くから実施され、心と体の調和を大切にしています。
- 日本:奈良・平安時代には骨折や脱臼の治療法があり、戦国時代には柔術とともに進化しました。
- 西洋:19世紀末、カナダのダニエル・デビッド・パーマがカイロプラクティックを創始し、脊椎の調整による神経系の正常化を提唱しました。
- 現代:科学的な研究が進み、医療やリラクゼーションの分野で広く活用されています。
【2】手技療法の種類
手技療法には、国家資格に基づくものと民間療法があります。
【国家資格に基づく手技療法】
- あん摩マッサージ指圧:日本伝統の施術法
- 柔道整復術:骨折・脱臼・捻挫の治療
- 理学療法:医師の指示のもと行うリハビリテーション
【民間療法】
- 整体:骨格や筋肉のバランスを整える
- カイロプラクティック:脊椎の矯正を中心とした施術
- オステオパシー:筋骨格系の調整を行う
- 推拿(すいな):中国伝統医学に基づく施術
- リフレクソロジー:足裏や手の反射区を刺激

- ロミロミ:ハワイ発祥のリラクゼーション法
- タイ古式マッサージ:ストレッチを取り入れた施術

- スポンディロセラピー:脊椎を中心とした調整
- 整膚:皮膚を軽く引っ張り血流を促す
- 操体法:体の自然な動きを活用した調整法
世界で人気の手技療法
世界的に人気のある手技療法には以下のようなものがあります。(NPO法人 日本ホリスティック医学協会の資料を参考)
- カイロプラクティック:脊椎の矯正を通じて神経系を調整
- タイ式マッサージ:ストレッチと圧迫を組み合わせた全身マッサージ
- リフレクソロジー:足や手の反射区を刺激し、全身の健康を促進
- クラニオセイクラルセラピー:頭蓋骨や仙骨を優しく調整し、脳脊髄液の流れを改善
- アロマセラピー:精油を使い、心身のリラクゼーションを促す
- オステオパシー:体の構造と機能の関係を重視し、施術で調整
- スポーツマッサージ:筋肉の疲労回復やパフォーマンス向上を目的
- アーユルヴェーダマッサージ:インド伝統医学に基づいた施術
- 指圧:日本伝統の施術法で、体の特定の点を押すことで健康を促進
- スウェディッシュマッサージ:リズミカルな手技で筋肉の緊張をほぐす
これらの手技療法は、それぞれ独自の技術や考え方に基づき、健康維持や治療の手助けをしています。
【3】手技療法で使用される手技
- 強擦法:手のひらで患部を強く押しながら擦ることで、筋肉の緊張をほぐします。
- 軽擦法:手のひらや指で軽く擦ることで、血行を促進しリラックス効果を得ます。
- 叩打法:手のひらや指で軽く叩くことで、神経や筋肉の興奮性を高めます。
- 圧迫法:指の頭や手の付け根で圧迫し、血液やリンパの流れを促進します。
- 振せん法:手のひらや指で振動を与え、筋肉全体を震わせて血行を改善します。
- 揉捏法:手で筋肉をつかみ揉みほぐすことで、筋肉の収縮を活発にし血行を促進します 。
【4】手技療法の効果
- 筋肉の緊張緩和:凝り固まった筋肉をほぐし、柔軟性を回復します。
- 血行促進:血流を改善し、新陳代謝を活性化します。
- 痛みの緩和:神経や筋肉への刺激を通じて、痛みを軽減します。
- 関節可動域の改善:関節の動きを改善し、機能を回復します。
- 自己治癒能力の向上:身体の自然な回復力を高める
- 自律神経の調整:リラックス効果により、ストレスの軽減や睡眠の質向上が期待されます。