美容アイテムとして人気の「かっさ」。
フェイスラインのケアやむくみ対策として知られていますが、その起源は古代中国で受け継がれてきた伝統療法にあります。
近年はSNSをきっかけに世界中へ広まり、美容だけでなく、肩こりや筋肉の緊張、血流との関係についても研究が進められるようになりました。一方で、「なぜ皮膚を擦るのか?」「赤い跡(Sha)は何なのか?」「本当に効果があるのか?」といった疑問を持つ人も少なくありません。
この記事では、かっさ療法の歴史や東洋医学の考え方、最新の科学研究、安全に取り入れるためのポイントまで、伝統と現代医学の両方の視点から分かりやすく解説します。
目次
・【1】かっさ療法とは?
・【2】東洋医学で考える「瘀血(おけつ)」とは?
・【3】科学研究で分かってきたこと
・【4】かっさ療法を安全に行うために
【1】かっさ療法とは?
古代中国から世界へ広がった「擦る健康法」
「かっさ(刮痧・グアシャ)」とは、中国で2000年以上前から受け継がれてきた伝統療法です。
「刮(グア)」は「擦る」、「痧(シャ)」は皮膚に現れる赤みや紫色の反応を意味します。
オイルを塗った皮膚を専用のプレートで一定方向に擦り、筋肉や筋膜を刺激することで、体の巡りを整えることを目的としています。
東洋医学では、経絡(けいらく)と呼ばれる「気」の通り道や、「瘀血(おけつ)」と呼ばれる血の滞りを整える施術と考えられてきました。
一方、現代医学では、血流の改善や筋肉・筋膜の緊張緩和、微小循環の促進などが研究されています。
<1-1>古代中国で生まれた家庭療法
かっさの起源は古代中国にさかのぼります。
薬が十分になかった時代、人々は陶器やスプーン、銅貨など身近な道具を使って皮膚を擦り、
- 風邪
- 発熱
- 頭痛
- 肩こり
などの不調を和らげていました。
こうした経験的な民間療法は、後に中医学の考え方へ取り入れられ、『黄帝内経』などの古典にも、皮膚刺激による治療の思想が記されています。
🔽【動画】かっさ(グアシャ)療法とは?
<1-2> 中国から世界へ広がる
19〜20世紀、中国系移民の広がりとともに、かっさ療法は台湾・香港・東南アジアへ伝わりました。
現在では、
| 地域 | 主な利用方法 |
|---|---|
| 中国 | 病院・中医学・家庭療法 |
| 台湾・香港 | 伝統療法・家庭ケア |
| 東南アジア | 中国系家庭の民間療法 |
| 韓国 | 美容・フェイスかっさ |
| 日本 | エステ・セルフケア |
| 欧米 | ウェルネス・ナチュラルビューティー |
と、それぞれの文化に合わせて発展しています。
2010年代以降はSNSの普及により、「Gua Sha Facial(フェイスかっさ)」として世界的な美容トレンドとなりました。
<1-3>主な目的
かっさ療法は、次のような目的で利用されています。
◎健康面
- 首・肩こり
- 腰痛
- 筋肉疲労
- 冷え
- 頭痛
- コンディション維持
◎美容面
- 顔のむくみ対策
- フェイスラインのケア
- 表情筋のリラックス
- スキンケア時のマッサージ
※美容効果には個人差があり、医療行為ではありません。
<1-4> 使用する道具(かっさプレート)
古くは、家庭にある丸みを帯びた道具が使われていました。
- 陶器のお皿
- れんげ
- スプーン
- 銅貨
現在では専用のかっさプレートが主流となり、
- 水牛の角
- 翡翠(ジェイド)
- ローズクォーツ
- 天然石
- ステンレス
- 温熱・振動機能付き電動かっさ
など、用途に応じたさまざまな素材や形状の製品が販売されています。
【2】東洋医学で考える「瘀血(おけつ)」とは?
東洋医学では、人の健康は
- 気(生命エネルギー)
- 血(けつ)
- 水(体液)
の3つがバランス良く巡っている状態と考えます。

このうち「血」の巡りが滞った状態を「瘀血(おけつ)」と呼びます。
瘀血は東洋医学の概念であり、西洋医学の病名ではありません。
東洋医学では、瘀血になると
- 肩こり
- 慢性的な痛み
- 冷え
- むくみ
- 月経トラブル
- 肌荒れ
など様々な不調につながると考えられています。
かっさ療法は、この「巡り」を整える方法の一つとして発展しました。
なお、瘀血は東洋医学独自の概念であり、舌診や問診などを組み合わせて総合的に判断されます。瘀血の考え方やセルフチェックについては、別記事で詳しく解説しています。
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「瘀血(おけつ)とは? 東洋医学で考える血の巡りとセルフチェック方法」
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<2-1>「Sha(シャ)」とは?
かっさを行うと、皮膚に赤色や紫色の跡が現れることがあります。
これは東洋医学では「瘀血が表面へ現れた反応」と説明されます。
一方、現代医学では
皮膚表面の毛細血管が刺激され、一時的に微小出血が起きた状態と考えられています。
通常は2〜7日ほどで自然に消えます。
🔽【動画】かっさ療法(gua-sha-therapy)
【3】科学研究で分かってきたこと
近年は、かっさ療法の作用を検証する臨床研究も増えています
1)慢性的な首の痛み
ドイツで行われたランダム化比較試験では、かっさ療法を受けたグループは、温熱療法よりも痛みの改善が大きく、首の可動域も向上しました。
2)慢性腰痛
高齢者を対象とした研究では、湿布を使用したグループより、かっさ療法を受けたグループの方が痛みの軽減や炎症マーカーの改善がみられました。
3)パーキンソン病患者
中国で行われた研究では、継続的なかっさ療法により、
- 睡眠の質
- 痛み
- 運動症状
の改善が報告されています。
4)美容分野
フェイスかっさでは、
- 顔の筋肉の緊張緩和
- むくみ軽減
- フェイスラインがすっきりしたという主観的評価
などが報告されています。
ただし、リフトアップや小顔効果を長期間維持できることを示す十分な科学的証拠は、現時点では限られています。
🔽【動画】フェイスかっさ
【4】かっさ療法を安全に行うために
かっさ療法は比較的安全なセルフケアですが、強く擦ればよいというものではありません。
特に顔は皮膚が薄いため、
- オイルを十分に使用する
- 力を入れすぎない
- 同じ場所を何度も擦らない
ことが大切です。
また、
- 発熱時
- 皮膚炎や傷がある部位
- 出血しやすい疾患
- 抗凝固薬を服用している場合
などは施術を避け、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
まとめ
かっさ療法は、古代中国で生まれた「皮膚を擦る」というシンプルな民間療法から始まり、現代では美容やウェルネスにも広がった伝統的セルフケアです。
東洋医学では「気・血・水」の巡りを整える方法として受け継がれ、一方で現代医学でも血流改善や筋緊張の緩和、痛みの軽減に関する研究が進められています。
美容目的で人気が高まる一方、万能な治療法ではなく、正しい方法で安全に取り入れることが重要です。数千年受け継がれてきた東洋の知恵と、最新の科学研究。その両方を知ることで、かっさ療法をより適切に活用できるでしょう。