世界の旬の食べ物!9月の旬を味わう|上海蟹・韓国の梨・ポルチーニ・ブドウ・リンゴ

温室栽培や冷蔵・冷凍技術、世界各地からの輸入が発達した現在、私たちは一年を通して、さまざまな食材を手に入れられるようになりました。

それでも、「この季節になると食べたくなる!」という食べ物があります。

秋になると栗やきのこ、冬になると牡蠣、春になると山菜――。

旬とは、単に「その食材が採れる時期」というだけではありません。
その土地の気候や自然のリズム、そして人々の暮らしや食文化が重なって生まれるものでもあります。

農林水産省では、旬を「自然の中で普通に育てた野菜や果物がとれる季節、魚がたくさんとれる季節」と説明しています。

一年中手に入る食材が増えた今だからこそ、旬の食べ物には、自然の恵みや季節の移り変わりを感じる楽しみがあります。

そこで今回は、9月に旬を迎える世界の食べ物に注目。

「今月、世界のどこで、何が旬を迎え、人々はそれをどう楽しみにしている?」

そんな視点から、中国、韓国、イタリア、スペイン、そしてアメリカの秋の味覚をたどってみましょう。

目次

・【1】中国|秋の風物詩、上海蟹
・【2】韓国|秋の味覚、梨
・【3】イタリア|秋を告げるポルチーニ
・【4】スペイン|秋の訪れを告げるブドウ
・【5】アメリカ|秋の楽しみ、リンゴ狩り
・【6】まとめ

【1】中国|秋の風物詩、上海蟹

中国の秋の味覚として、まず名前が挙がるものの一つが「上海蟹(大閘蟹/ダージャーシエ)」です。

日本では「上海蟹」という名前で知られていますが、中国全土で同じように親しまれているというより、上海・江蘇省など、長江下流域を中心とする華東地域で特に根付いてきた秋の味覚です。

上海蟹は、中国各地で養殖されているチュウゴクモクズガニのこと。なかでも名産地として特に有名なのが、上海の西に位置する江蘇省・蘇州市の「陽澄湖(ようちょうこ)」です。

豊かな水草に恵まれた陽澄湖は、大閘蟹の産地として知られ、現在では「陽澄湖大閘蟹」というブランド蟹としても有名です。

🔽【動画】陽澄湖(ようちょうこ):上海蟹(大閘蟹/ダージャーシエ)

<1-1>秋に蟹を食べる文化

中国では、秋に蟹を食べる文化が古くから存在したとされています。

蟹そのものを食べる習慣は古く、漢代の記録にも蟹が登場します。

古代には、蟹が皇帝への献上品や宮廷料理として扱われた記録も残っていますが、蟹を食べる文化が宮廷だけに限られていたわけではありません。

中国では古くから、さまざまな階層の人々が蟹を食べ、その食べ方や楽しみ方を発展させてきました。特に宋代になると、蟹は庶民を含む幅広い人々の間で食べられるようになり、詩や料理書にも蟹を楽しむ様子が数多く記されています。

こうした長い蟹食文化を背景に、現在の中国では、秋になると蟹を楽しむという季節感が定着しています。

ただし、現在のように「秋の高級食材」として大閘蟹が知られるようになったのは、古代から続く食文化だけが理由ではありません。近代以降の養殖技術の発展や流通の整備、そして陽澄湖などの産地ブランドの確立も大きく関わっています。

古くから続く蟹食文化と、現代の養殖・流通・ブランド化が重なり、今日の「秋の味覚としての大閘蟹」につながっているのです。

<1-2>上海蟹の人気料理

上海蟹の代表的な食べ方は、蒸してそのまま味わう方法です。

小ぶりな蟹ですが、身だけでなく、濃厚な蟹味噌や卵も魅力。生姜や黒酢を添えて、蟹そのものの味わいを楽しみます。

特に秋の大閘蟹は、雄と雌で味わいの魅力が異なることでも知られています。

一般には、雌は卵、雄は白子のような「蟹膏」がそれぞれの魅力とされ、旬の時期に合わせて食べ分けられてきました。

🔽【動画】上海蟹(大閘蟹/ダージャーシエ):蒸してそのまま味わう

また、上海や蘇州などの江南地方では、蟹の身や卵、味噌を使った料理も親しまれています。

蟹粉小籠包は、蟹の身や蟹味噌を使った小籠包。肉の餡に蟹の風味を加えた、秋ならではの味わいです。

🔽【動画】蟹粉小籠包:蟹の身や蟹味噌を使った小籠包

蟹粉豆腐は、柔らかな豆腐に蟹の身や蟹味噌を合わせた料理。

さらに、蟹の旨味を麺に合わせた蟹粉麺などもあり、上海・蘇州周辺では、旬の蟹をさまざまな料理で味わうことができます。

🔽【動画】蟹の旨味を麺に合わせた蟹粉麺

【2】韓国|秋の味覚、梨

韓国では、秋を表す言葉として「천고마비(チョンゴマビ/天高馬肥)」があります。

「空は高く、馬は肥える」という意味で、空が澄み、食べ物が豊富になる秋の様子を表した言葉です。韓国では秋を、春に植えた作物が実り、自然の恵みを味わう季節として、昔から意識してきました。

そんな韓国の秋の味覚の一つが、「梨(배/ペ)」です。

韓国の梨は大きく、みずみずしく、シャリッとした食感が特徴。秋を代表する果物として、そのまま食べるだけでなく、料理にも使われてきました。

特に興味深いのが、梨を料理の甘味や風味づけに使う文化です。

韓国では古くから梨を細切りにして料理に添えたり、タレや汁に加えたりしてきました。1849年に書かれた『東国歳時記』には、梨を細切りにして肉や野菜などと合わせた料理が登場し、1921年の料理書にも、ビビンバの飾りとして梨を使う例が記されています。現在でも、冷麺やビビムグクスに細切りの梨を添えたり、トンチミの汁に梨を加えたりする食べ方が残っています。

🔽【動画】梨を使った冷麺のタレ

また、昔の韓国梨は現在のものより硬く、酸味が強かったため、「香雪膏(향설고/ヒャンソルゴ)」という伝統的な梨料理にも使われました。

1809年の料理書『閨閤叢書』には、酸味のある野生梨を蜂蜜水と生姜でじっくり煮る料理として紹介されています。梨に黒こしょうを差して煮込み、蜂蜜が染み込んで赤みを帯びるまで加熱するという、現在の「梨をそのまま食べる」イメージとは少し違った食べ方です。

韓国の秋には、ワタリガニやエビ、コノシロなどの海産物も旬を迎えますが、梨のように旬の果物をそのまま味わうだけでなく、料理の味や香りにも取り入れるところに、韓国ならではの季節の食文化を見ることができます。

🔽【動画】梨のデザート「배숙(ペスク)」

※韓国では、梨を生姜や蜂蜜とともに煮込む「배숙(ペスク)」という伝統的な温かいデザートがあります。 とろりとした甘さと生姜の香りが特徴で、食後の一品として親しまれるほか、風邪をひいたときに体を温める家庭療法としても知られています。

【3】イタリア|秋を告げるポルチーニ

イタリアの9月の味覚として注目したいのが、「ポルチーニ(funghi porcini)」です。

ポルチーニは、日本でいうヤマドリタケの仲間。香りがよく、肉厚で旨味の強いきのこです。

イタリアでは、きのこの採取シーズンが夏の終わりから秋にかけて訪れ、9月はポルチーニが本格的に顔を出し始める時期。特に雨が降った後の森では、ポルチーニを探す人々の姿が見られます。

🔽【動画】ポルチーニ狩り

ポルチーニは一年を通して流通していますが、秋の森で採れた新鮮なポルチーニは格別です。

市場や道沿いの販売所にポルチーニが並び始めると、夏から秋へ季節が移ったことを感じる人も少なくありません。

新鮮なポルチーニは、にんにくやオリーブオイルと合わせて焼いたり炒めたりするほか、パスタやリゾット、ポレンタなどにも使われます。

特に秋のイタリアでは、ポルチーニのパスタやリゾットが季節を感じさせる料理として親しまれています。

また、イタリア各地には、地域の特産品や旬の食材を囲んで楽しむ「サグラ(sagra)」と呼ばれる地域の食の祭りがあります。ポルチーニの産地では、このきのこを主役にしたサグラも開かれ、ポレンタやリゾット、タリアテッレなど、さまざまなポルチーニ料理が登場します。

日本で「秋になると松茸が気になる」ように、イタリアでは森にポルチーニが現れることが、秋の食卓を楽しみにするきっかけの一つになっているのです。

🔽【動画】イタリア:ポルチーニ茸の収穫祭(Sagra del Fungo Porcino)

※「Sagra del Fungo Porcino」 は、イタリア・ローマ近郊のコッレ・ディ・フォーリ(ロッカ・プリオーラ)で行われる、ポルチーニ茸の収穫を祝う秋祭りです。 地元で採れたポルチーニを使った料理が並び、音楽やダンス、屋台が集まる地域密着型の食の祭典で、イタリアの「サグラ(食の祭り)」文化を象徴するイベントのひとつです。

【4】スペイン|秋の訪れを告げるブドウ

スペインの9月の味覚として欠かせないのが、「ブドウ(uva)」です。

スペインは世界有数のワイン産地の一つ。夏の終わりから秋にかけてブドウが熟し、地域や品種によって異なりますが、8月末から9月、10月頃にかけて収穫期を迎えます。

🔽【動画】ブドウの収穫

そのため9月は、スペイン各地のワイン産地でブドウの収穫が始まる季節。スペイン政府観光局も、9月を伝統的な「ブドウ収穫祭(fiestas de la vendimia)」の時期として紹介しています。ヘレスやログローニョなど、ワインで知られる地域では、収穫に合わせて試飲やさまざまな催しが行われます。

🔽スペイン:ブドウ収穫祭(fiestas de la vendimia)

スペインのブドウ栽培とワイン造りの歴史は古く、紀元前にはすでにイベリア半島でブドウが栽培されていたと考えられています。その後、ローマ人によってワイン造りが大きく発展し、ブドウ畑はスペイン各地へ広がっていきました。

こうした長い歴史の中で、ブドウの成熟と収穫は、夏から秋への季節の移り変わりを告げる風景となっていったのです。

<3-1>スペインを代表するブドウ産地

スペインには数多くのワイン産地がありますが、なかでも有名なのがリオハ、ヘレス、カタルーニャです。

リオハ(La Rioja)」は、スペインを代表する高級ワイン産地の一つ。特にテンプラニーリョを使った赤ワインで知られ、熟成した赤ワインの産地として世界的に評価されています。

ヘレス(Jerez)」は、アンダルシア地方にあるワイン産地。ここで造られるのが、世界的に有名な「シェリー(Jerez/Sherry)」です。白ブドウから造られる酒精強化ワインで、辛口から甘口までさまざまなタイプがあります。

そしてカタルーニャ地方は、スペインを代表するスパークリングワイン、「カバ(Cava)」の産地として知られています。特にペネデス地方では、伝統的な瓶内二次発酵によるカバ造りが盛んです。

【5】アメリカ|秋の楽しみ、リンゴ狩り

アメリカの秋の味覚として紹介したいのが、「リンゴ(apple)」です。

アメリカでは地域や品種によって収穫時期が異なりますが、8月から秋にかけてリンゴのシーズンが本格化し、特に北東部や中西部などでは9月下旬から10月にかけて収穫のピークを迎える地域があります。

リンゴはそのまま食べるだけでなく、アップルパイ、アップルサイダー、アップルソースなど、さまざまな形で秋の食卓に登場します。

🔽【動画】アップルタルト(apple tart)

そして、アメリカのリンゴ文化で特に印象的なのが、「Apple Picking(アップル・ピッキング)」です。

秋になると家族や友人と農園へ出かけ、リンゴを自分で摘み取る「リンゴ狩り」が季節のレジャーになります。

アメリカ各地には多くの「U-Pick農園(自分で果物を収穫できる農園)」があり、リンゴを収穫するだけでなく、農園での食事や秋のイベントなどを一緒に楽しめる場所もあります。リンゴを使ったドーナツや焼き菓子などを販売する農園もあり、リンゴ狩りそのものが秋の風物詩となっています。

なかでもニューヨーク州のハドソン・バレーは、リンゴの産地として知られ、秋には多くの農園でApple Pickingを楽しむことができます。マンハッタンからも訪れやすく、リンゴ狩りと紅葉を一緒に楽しめる秋の行楽地としても人気です。

🔽【動画】Apple Picking(アップル・ピッキング)

まとめ

9月の世界の旬を訪ねてみると、同じ「旬の食べ物」でも、その楽しみ方は国によってさまざまです。

中国では、秋になると上海蟹が市場や食卓を彩り、韓国では梨をそのまま味わうだけでなく、昔から料理にも取り入れてきました。イタリアでは森にポルチーニが顔を出し、スペインでは熟したブドウがワイン造りへとつながり、アメリカではリンゴを自分で収穫することそのものが秋の楽しみになっています。

こうして見ると、旬とは単に「その食べ物がおいしい時期」というだけではありません。

その食材が実る場所へ出かけたり、季節ならではの料理を作ったり、収穫を楽しんだり。時には地域の祭りや行事とも結びつきながら、旬を迎えた食べ物を通して、季節そのものを味わっているのです。

温室栽培や輸入によって、一年を通してさまざまな食材を手にできるようになった今でも、旬の食べ物には、自然のリズムと人の暮らしをつなぐ力があります。

9月にしか味わえないものを探してみる。

それは、いつでも食べられる便利さとはまた違う、季節を楽しむ一つの方法なのかもしれません。

そして世界には、旬の恵みを収穫祭や豊穣祭として祝う文化もあります。
次は、こうした「実りを祝う」という視点から、世界の収穫祭・豊穣祭を訪ねてみるのも面白そうです。

👉【関連記事】世界の収穫祭|最後の一束、収穫冠、新米に込められた感謝の文化

関連記事

  1. 戦士の訓練が文化になった──棒倒し・ブズカシ・ラ・ペルラに見…

  2. 日本の「夏越の祓」だけじゃない!6月は浄化の季節?日本・韓国…

  3. 世界の昔の口紅|赤土・紅花・鉱物から生まれた唇の彩り

  4. 年末年始に“心身をリセット”する|世界の浄化文化と浄化の旅

  5. 自然から運を読む世界の文化|亀卜・鳥占・インド占星術・ローマ…

  6. 昔の人は何で身体を洗っていた?|歯磨き・洗髪・洗濯に使われた…