空を見上げたとき、いつもと違う鳥が飛んでいた。
動物の行動が、なぜか気になった。
雨の降り方や風の変化に、何か意味があるように感じた。
現代の私たちなら、「偶然」と考えるような出来事です。
けれど昔の人々にとって、自然は単なる景色ではありませんでした。
天候、動物、鳥、植物、炎、煙、石、骨――。
身の回りで起こるさまざまな現象を観察し、そこに未来への兆しや神々からのメッセージを読み取ろうとする文化が、世界各地で生まれています。
目次
・【1】中国|甲骨のひびから神意を読む
・【2】日本|亀卜で甲羅のひびを読む
・【3】日本|鳥の動きから吉凶を読む
・【4】インド|星・動物・身近な出来事を読む
・【5】ヨーロッパ|鳥や雷から「神々の意思」を読む
・【6】アフリカ|骨を投げて、その配置を読む
・【7】まとめ
【1】甲骨占卜(こうこつせんぼく)とは?
「亀の甲羅や動物の骨を焼き、そこに現れたひび割れから未来を占う」。
古代中国には、そんな独特の占卜文化がありました。これが「甲骨占卜(こうこつせんぼく)」です。
「占卜(せんぼく)」とは、自然界に現れた兆しを読み取り、神や祖先の意思を知ろうとする占いの総称です。 ひび割れや形の変化など、偶然に見える現象を「兆し」として解釈し、吉凶や方針を判断する行為を指します。
使われたのは、亀の甲羅や牛などの骨。 表面を加工してから熱を加えると亀裂が生じます。そのひびの形を占卜者が読み取り、吉凶を判断しました。
そして興味深いのが、占った内容や結果だけでなく、何を占ったのかまで甲羅や骨に刻んだことです。 これが、現在「甲骨文字」と呼ばれている文字資料です。
現在確認できる代表的な資料は、紀元前13~11世紀頃の殷(商)王朝後期のもの。現在の河南省安陽市にある殷墟から、大量の亀の甲羅や牛の肩甲骨などが発見されています。
占われたのは、王や王朝に関わる重要な事柄でした。
- 雨が降るか?
- 農作物が実るか?
- 狩猟が成功するか?
- 戦争に勝てるか?
- 祭祀をいつ行うか?
- 王族の病気や出産はどうなるか?
など、国家や王族の行方を左右する問題を、王を中心とする王室・宮廷の人々が占っていたと考えられています。
🔽【動画】甲骨占卜(こうこつせんぼく)
<1-1>なぜ「ひび」が答えになったの?
古代中国では、天候や農作物、戦争など、人間の暮らしと自然・神々の世界は密接につながっていると考えられていました。
そのため、甲羅や骨に現れたひびも、単なる偶然ではなく、神や祖先から示された兆しとして解釈されたのです。
ここにあるのは、自然界に現れた変化を読み、目に見えない存在の意思を知ろうとするという考え方です。
<1-2>この文化は、その後どうなった?
殷王朝の後、周王朝になると、亀の甲羅や骨を焼いてひびを見る「卜(ぼく)」に加え、蓍草(めどき)を使って卦を立てる「筮(ぜい)」が行われるようになります。
その後、中国の占いは一つの方法にまとまるのではなく、複数の方法へと広がっていきました。
大まかな流れは次の通りです。
甲羅や骨を焼いて、ひびから吉凶を読む「卜(ぼく)」
↓
「蓍草(めどき)」や「筮竹(ぜいちく)」を使い、卦を立てる「筮(ぜい)」
↓
卦の意味を読み解く『易経』と結びついた「易占(えきせん)」
↓
八字(四柱推命)、風水、紫微斗数など、さまざまな伝統的占術へ
ここで重要なのは、「甲骨占卜がそのまま易占になった」という単純な変化ではないことです。
「卜(ぼく)」と「筮(ぜい)」はもともと別の占い方法で、それぞれ独自に発展しました。 その中で、筮で得られる卦の意味をまとめた古典が『易経(えききょう)』です。
『易経』は卦の意味を説明するための古典として発達し、卦を立てて吉凶を判断する「易占(えきせん)」と深く結びついています。
しかし後世になると、『易経』は儒教の重要な古典として扱われるようになり、 占いの書ではなく、自然・社会・人生の変化を考える哲学書としても読まれるようになりました。
そのため現在では、
その結果、現在の中国では、
- ①『易経』を思想書として読む人(占いはしない)
- ②『易経』を使って占う人(易占を行う)
という二つの読み方が存在しています。
つまり、「易経を読む=占いをする」ではないということです。
一方で、占いとしての「易占」も伝統文化として今も続いています。 さらに後世には、八字(四柱推命)、風水、紫微斗数など、異なる体系の占術も発達しました。
現在でも、これらを占いとして利用したり、伝統文化として学んだりする人がいます。
殷王朝の後、周王朝の時代になると、亀の甲羅や動物の骨を焼いてひびを見る「卜(ぼく)」だけでなく、**蓍草(めどき)などを使って「卦(か)」を立てる「筮(ぜい)」**も行われるようになりました。
その後、中国の占いは一つの方法に集約されるのではなく、さまざまな方法へと広がっていきます。
大まかに見ると、
甲羅や骨を焼いて、ひびから吉凶を読む「卜(ぼく)」
↓
「蓍草(めどき)」や「筮竹(ぜいちく)」を使い、卦を立てる「筮(ぜい)」
↓
卦の意味を読み解く『易経』と結びついた「易占(えきせん)」
↓
八字(四柱推命)、風水、紫微斗数など、さまざまな伝統的占術へ
というように、中国では長い時間をかけて占いの方法が増えていきました。
ここで重要なのは、「甲骨占卜がそのまま易占になった」という単純な変化ではないことです。
「卜(ぼく)」と「筮(ぜい)」はもともと異なる占いの方法で、その後もそれぞれの伝統が発展しました。その一方で、筮で得られる卦の意味をまとめた古典が『易経(えききょう)』です。
『易経』には、陰と陽の組み合わせからなる64種類の卦の解釈が収められており、これをもとに卦の意味を読み取る「易占(えきせん)」が発達しました。
『易経』は、もともと「卦の意味を説明するための古典」として発達しました。 そのため、卦を立てて吉凶を判断する「易占」と深く結びついています。
しかし後世になると、『易経』は儒教の重要な古典として扱われるようになり、 「占いの本」ではなく、人生・社会・自然の変化を考えるための哲学書としても読まれるようになりました。
その結果、現在の中国では、
- ①『易経』を思想書として読む人(占いはしない)
- ②『易経』を使って占う人(易占を行う)
という二つの読み方が存在しています。
つまり、 「易経を読む=占いをする」ではないということです。
一方で、占いとしての「易占」も伝統文化として今も続いています。
さらに中国では、易占だけでなく、後世になると八字(四柱推命)、風水、紫微斗数など、異なる考え方や方法を持つ伝統的な占術も発達しました。
現在でも、これらを占いとして利用したり、伝統文化として学んだりする人がいます。
| 言葉 | 何をするもの? | 簡単にいうと |
|---|---|---|
| 卜(ぼく) | 亀の甲羅や骨を焼き、ひびを見る | ひびから読む |
| 筮(ぜい) | 蓍草などを使って一定の操作をし、卦を得る | 棒や草を使って卦を立てる |
| 卦(か) | 陰と陽を表す線を組み合わせた記号 | 占いの結果として出てくる図形 |
| 易経(えききょう) | 64の卦についての説明などをまとめた古典 | 卦を読み解くための古典 |
| 易占(えきせん) | 卦を立て、その意味を読み解いて占うこと | 「易」を使った占い |
| 筮竹(ぜいちく) | 筮に使う細い竹の棒 | 占いに使う道具 |
コラム|「卦」って何?
「卦(か)」というのは、簡単にいうと、陰と陽を表す線を組み合わせた記号です。
代表的なものが、
☰ 乾(けん)=天
☷ 坤(こん)=地
などで、こうした基本的な8種類の「八卦(はっけ)」を組み合わせて、**64種類の「六十四卦」**を作ります。
占筮では、「蓍草(めどぎ)という植物の茎」などを使って得られた数から卦を立て、その卦やそこに付された言葉を読み解いて、現在の状況やこれから起こることを判断しました。
🔽【動画】易経とは?
【2】日本|亀卜で甲羅のひびを読む
中国大陸や朝鮮半島から日本へ伝わった占卜・祭祀文化の影響を受け、日本にも亀の甲羅を火で焼き、そこに現れたひび割れから吉凶を判断する「亀卜(きぼく)」が伝わりました。
古代の日本では、国家的な祭祀や政治に関わる重要な占卜として用いられていました。
朝廷には、占卜を専門に担当する「卜部(うらべ)」という集団が置かれ、亀卜をはじめとする占卜を担っていました。天皇や国家に関わる祭祀、重要な事柄について吉凶を占う役割です。
亀卜では、
- 祭祀の日取り
- 政治や国家に関わる事柄
- 天候や農作
- 遷都などの重要な決定
- 神事に関する吉凶
など、国家や朝廷に関わるさまざまな事柄が占われました。
亀卜が日本でいつ始まったのか、正確な年代は分かっていませんが、すでに7~8世紀頃には亀卜が行われていたことが文献から確認できます。
『日本書紀』にも、亀の甲羅を焼いて吉凶を占う記述があり、律令国家が成立していく過程で、亀卜が国家の祭祀に組み込まれていったことが分かります。
<2-1>現在も残る亀卜
時代が進むにつれて、朝廷で行われていた亀卜は次第に衰退していきました。
一方で、現在も長崎県の対馬などに、その伝統が受け継がれています。
対馬の亀卜では、アカウミガメの甲羅を用い、火を当てて生じたひび割れを読み取ります。
大陸から朝鮮半島を経て日本へ伝わったとされる古い占卜文化が、日本の西の玄関口ともいえる対馬で、地域の祭祀文化として今も残されているのです。
🔽【動画】1500年以上続いていると言われる亀卜神事
【3】日本|鳥の動きから吉凶を読む
亀の甲羅のひびだけでなく、**鳥の姿や動きから吉凶を読む「鳥占(とりうら)」**も、日本に古くから伝わる占兆のひとつです。
鳥は空を飛び、山や海を越えて移動することから、人間の世界と神々の世界をつなぐ存在として捉えられることがありました。
そのため、鳥の突然の飛来や特徴的な鳴き声などを、単なる偶然ではなく、神や自然から示されたサインとして受け取ったのです。
ただし、鳥なら何でも神聖だったわけではありません。 日本では、カラス、ハト、トビなど、特定の鳥が特定の神や信仰と結びつく例があります。
鳥占では、鳥の種類だけでなく、どこから飛んできたのか、どの方向へ飛んでいったのか、どんな声で鳴いたのか、いつ現れたのかなど、鳥の行動そのものを観察し、そこに現れた兆しから吉凶を判断しました。
こうした鳥の兆しを読む文化は、農作や天候、日常生活に関わる民間の占いにも見られます。
また、正月などに小鳥を捕らえ、その胃の中に入っている穀物の種類や量から、その年の農作の豊凶を占う風習もありました。
鳥の姿や行動を通して、その年の自然や暮らしの行方を読む。そこには、自然界に現れる小さな変化を「兆し」として受け取る、古くからの日本の世界観が表れています。
【4】インド|星・動物・身近な出来事を読む
インドでは、古くから星や惑星などの天体だけでなく、サンスクリット語で**シャクナ(śakuna)**などと呼ばれる「兆候」を読み取る考え方が発達しました。
古代・中世のインドでは、自然界は単なる背景ではなく、宇宙の秩序が現れる場所と考えられており、
- 動物がどのように現れたか
- 鳥がどの方向から飛んできたか
- どんな声で鳴いたか
- 天体がどの位置にあるか
- 珍しい自然現象が起こったか
- 日常生活の中でどんな出来事が起こったか
などが、吉凶を判断する材料となりました。
こうした兆候を読み取る知識は、古代から中世にかけて文献にもまとめられ、王や祭司、占星術師など、専門的な知識を持つ人々が扱っていました。
<4-1>星を読む
インドの占星術の歴史は古く、紀元前1千年紀には、太陽や月、星の動きを観察する知識が発達していました。
その後、紀元前後になると、古代ギリシャやバビロニアなどから伝わった天文学・占星術の影響も加わり、惑星の位置から人間や社会の出来事を読み取る占星術が発展していきます。
インドでは、太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星などの天体の位置や動きをもとに、人間や社会に起こる出来事との関係を読みました。
特に重要なのが、生まれた日時と場所です。
生まれた瞬間の天体の位置をもとに**出生図(ホロスコープ)**を作り、そこから性格や才能、結婚、仕事、財産、人生の転機などを読み取ろうとします。
また、個人だけでなく、王や王朝にとっても占星術は重要でした。政治や戦争、王の運勢、国家に起こる出来事などについても、天体の動きが判断材料とされました。
<4-2>現在も暮らしに残るインド占星術
インドの占星術は、現在も**ジョーティシャ(Jyotiṣa)**と呼ばれる伝統的な知識体系として知られています。
日本で「星占い」というと、雑誌やテレビで見る12星座占いを思い浮かべますが、インドでは、生まれた瞬間の天体配置から一人ひとりの人生を読み解くという位置づけが強いのが特徴です。
現在でも、結婚相手との相性を出生図から確認したり、結婚式や開業、引っ越しなどの重要な出来事について、いつ行うのがよいかを占星術から判断することがあります。
もちろん、現代のインド人すべてが占星術を信じているわけではありません。科学的な考え方から占星術を迷信と考える人もいます。
それでも、占星術師に相談したり、出生図を作ったり、人生の節目に占星術を参考にしたりする文化は現在も残っています。
つまりインドでは、星は単に「今日の運勢」を占うものではなく、人生や社会の出来事を宇宙の動きと結びつけて考えるための文化として受け継がれているのです。
【4】インド|星・動物・身近な出来事を読む
インドでは、古くから星や惑星などの天体だけでなく、サンスクリット語で**シャクナ(śakuna)**などと呼ばれる「兆候」を読み取る考え方が発達しました。
古代・中世のインドでは、自然界は単なる背景ではなく、宇宙の秩序が現れる場所と考えられており、
- 動物がどのように現れたか
- 鳥がどの方向から飛んできたか
- どんな声で鳴いたか
- 天体がどの位置にあるか
- 珍しい自然現象が起こったか
- 日常生活の中でどんな出来事が起こったか
などが、吉凶を判断する材料となりました。
こうした兆候を読み取る知識は、古代から中世にかけて文献としてもまとめられ、王や祭司、占星術師など、専門的な知識を持つ人々が扱っていました。
一方で、動物の出現や鳥の鳴き声、日常の出来事などを吉凶のしるしとする考え方は、専門家だけのものではなく、人々の暮らしの中にも広がっていたと考えられます。
<4-1>星を読む
インドの占星術の歴史は古く、紀元前1千年紀には、太陽や月、星の動きなどを観察する知識が発達していました。
その後、紀元前後になると、古代ギリシャやバビロニアなどから伝わった天文学・占星術の影響も加わり、惑星の位置から人間や社会の出来事を読み取る占星術が発展していきます。
インドでは、太陽・月・火星・水星・木星・金星・土星などの天体の位置や動きをもとに、人生や国家、天候などに起こる出来事との関係を読みました。
特に重要なのが、生まれた時刻と場所です。
生まれた瞬間の天体の位置をもとに**出生図(ホロスコープ)**を作り、
- 性格や才能
- 結婚
- 仕事
- 財産
- 健康
- 人生の転機
などを読み取ろうとしました。
また、個人だけではありません。
王や王朝にとっても占星術は重要で、戦争や政治、王の運勢、国家に起こる出来事などを判断するためにも用いられました。
つまりインドでは、空に現れる星や惑星の動きを単なる天体現象として見るのではなく、宇宙で起こっていることと、人間の世界で起こることがつながっていると考え、その関係を読み解こうとしたのです。
<4-2>現在も暮らしに残るインド占星術
インドの占星術は、単なる「今日の運勢」を楽しむ占いとは少し違います。
現在も**ジョーティシャ(Jyotiṣa)**と呼ばれる伝統的な占星術が広く知られており、人生の重要な場面で参考にされることがあります。
その中心となるのが、出生時の**日時と場所から作る「出生図(ホロスコープ)」**です。
生まれた瞬間の太陽や月、惑星などの位置を図にして、そこから人生の傾向や出来事を読み取ります。
たとえば、
- 結婚相手や結婚の時期
- 仕事や転職
- 子ども
- 財産
- 人生の転機
- 重要な行動を起こす時期
などが占われます。
特にインドでは、結婚の相性を見るために出生図を比較することがよく知られています。
また、結婚式や開業、引っ越しなど、人生の重要な出来事について、**「いつ行うのがよいか」**を占星術から判断することもあります。
そのため、インド占星術は「自分の性格を知るための占い」というだけではなく、人生の節目で判断材料のひとつとして使われてきた文化といえます。
もちろん、現代のインド人全員が占星術を信じているわけではありません。
科学的な教育を受け、占星術を迷信と考える人もいます。一方で、都市部を含めて占星術師に相談したり、新聞やウェブサイトで占星術を見たりする人もおり、伝統文化と現代生活が共存しているのが現在のインド占星術の特徴です。
日本の「星占い」というと、雑誌やテレビで見る12星座占いを思い浮かべますが、インドではそれよりも、生まれた瞬間の天体配置をもとに、一人ひとりの人生を読み解くものという位置づけが強いのです。
【5】ヨーロッパ|鳥や雷から「神々の意思」を読む
古代ヨーロッパにも、自然現象を神々からの「兆し」として読む文化がありました。
その代表が、**古代ローマのアウグル(augur)**です。
アウグルは、鳥の飛び方や鳴き声だけでなく、雷、天候、動物の行動などに現れる兆候を観察し、それが神々に受け入れられたものなのか、避けるべきものなのかを判断する専門職でした。
古代ローマでは、こうした判断は単なる個人の占いではありません。
政治家や軍人が重要な決定をするときにも、神々の意思を確認するためにアウグルの判断が重視されました。
戦争や軍事行動、政治的な決定、祭祀など、国家に関わる重要な場面で自然の兆候が判断材料となったのです。
<5-1>どんな鳥を見ていた?
ここが日本の鳥占との大きな違いです。
古代ローマでは、空を飛ぶ鳥なら何でも占いの対象にしたわけではありません。
占いに用いられる代表的な鳥には、
- ワシ――飛翔によって兆しを示す代表的な鳥。ユピテルと結びつく重要な鳥
- ハゲワシ――飛び方や現れる数などが重要な兆しとなった
- ワタリガラス
- カラス
- フクロウ
- キツツキ
などがありました。鳥は、**飛び方で兆しを示すもの(alites)**と、**鳴き声・声で兆しを示すもの(oscines)**などに分けて考えられていました。
さらに興味深いのが、ニワトリです。
軍事行動などの際には、専門の係が飼育していたニワトリに餌を与え、どのように食べるかを観察しました。
餌を勢いよく食べ、口からこぼれた餌が地面に落ちるほどなら吉兆。反対に、餌を食べない、逃げる、翼をばたつかせるなどの行動は不吉な兆しとされました。
つまりローマでは、
ワシやハゲワシの飛翔
↓
カラスやワタリガラスの鳴き声
↓
ニワトリの食べ方
まで、鳥の種類に応じて異なる「読み方」があったのです。
そして、これらを解釈するアウグルは、国家の宗教制度の中に位置づけられた専門職でした。
日本の鳥占が、身近な鳥の姿や行動から農作や暮らしの兆しを読む文化だったのに対し、古代ローマでは、特定の鳥や自然現象を専門家が解釈し、政治や軍事の判断に神意を反映させる仕組みになっていたのです。
【6】アフリカ|骨を投げて、その配置を読む
アフリカについては、「アフリカの占い」と一括りにすることはできません。
大陸には非常に多様な文化があり、地域や民族によって占いの方法も、そこに込められる意味も大きく異なります。
その中でも、今回の「自然から運を読む」というテーマに特に興味深いのが、**南部アフリカで見られる「bone throwing(ボーン・スローイング)」**です。
南部アフリカの一部の文化では、伝統的な占い師が、動物の骨や骨片、貝殻などを床や地面に投げ、その落ちた位置や組み合わせから相談者の状況を読み取ります。
使われる道具は一種類の骨だけではありません。
動物の骨のほか、椎骨、歯、貝殻、石、木片など、さまざまなものが組み合わされることがあります。
そして重要なのは、一つひとつの道具に意味が与えられていることです。
たとえば、ある骨は特定の動物や性質、人間関係などを象徴し、別の骨は別の意味を持つ。
それらを投げたとき、
どの面が上を向いたか
どの道具が近くに集まったか
どれが離れた場所に落ちたか
ほかの道具とどのような位置関係になったか
などを組み合わせて読み取ります。
つまり、単純に「この骨が出たから吉」というものではなく、投げるたびに変わる配置全体をひとつのメッセージとして解釈するのです。
<6-1>何を占うの?
bone throwing は、単に「今年は運がいいか、悪いか」を占うものではありません。
相談者が抱えている問題について、
- なぜ問題が起こっているのか
- 家族や人間関係に何か問題があるのか
- 仕事や生活がうまくいかない理由は何か
- これからどう行動すべきか
- 祖先との関係に問題がないか
など、現在の状況や問題の原因を読み解くためにも用いられます。
そのため、占い師は骨の配置だけを見て終わるのではなく、相談者との会話を重ねながら、その人の状況に合わせて解釈していくことがあります。
ここが、いわゆる「未来を当てる占い」と少し違うところです。
骨の配置は、相談者が抱えている問題を読み解くための手がかりとして使われるのです。
<6-2>なぜ「骨」を使うの?
使われる骨には、単なる道具以上の意味があります。
南部アフリカの一部の伝統では、動物は人間の生活や精神世界と深く結びついた存在と考えられてきました。
そのため、動物の骨を使うことで、動物が持つ性質や象徴性を占いの中に取り込むことがあります。
実際に、ライオン、ヒョウ、ゾウなどの動物が象徴的な意味を持ち、その動物の骨が占いの道具に組み込まれる例もあります。
ただし、「ライオンの骨なら必ず勇気を意味する」といった単純な共通ルールが、南部アフリカ全域にあるわけではありません。
どの動物を使うのか、どんな意味を持たせるのかは、地域や文化、占い師の伝統によって異なります。
<6-3>偶然の配置から意味を読む
bone throwing の面白さは、投げるまで結果が分からないことです。
占い師が骨を並べて答えを作るのではなく、投げるという偶然の動作によって、その都度違う配置が生まれます。
そして、その偶然に現れた配置を、意味のあるものとして読み解きます。
これは、日本の亀卜や鳥占とは方法が大きく違います。
亀卜では甲羅に生じたひび、鳥占では鳥の行動、そして南部アフリカのbone throwingでは投げた骨の配置。
方法はまったく異なりますが、そこには共通する考え方があります。
人間が自分の力だけでは知ることのできないことを、自然や偶然の中に現れた「しるし」から読み取ろうとする。
「未来はまだ起こっていないのに、なぜ分かるのだろう?」
そう考えると不思議ですが、世界各地には、偶然に現れた形や動きを偶然のまま終わらせず、そこに意味を見出す文化が存在してきました。