韓国の夏の保養食・伝統ドリンク6選|参鶏湯・シッケ・五味子茶に学ぶ夏養生文化

韓国には、暑さで消耗した体を食事でいたわる「保養食(보양식)」という文化があります。

日本の「土用の丑の日」のように、暑い季節を元気に乗り切るための食文化が古くから受け継がれており、滋養豊かな料理や、体を潤す伝統茶が今でも親しまれています。

韓医学の「薬食同源(食事で健康を養う)」という考え方のもと、季節に合わせて食材を選び、体調を整える知恵が暮らしの中に根付いているのも特徴です。

今回は、韓国で夏の養生食として親しまれてきた伝統料理とドリンクをご紹介します。

目次

・【1】夏の保養食:蓮の葉ごはん
・【2】夏の滋養食:参鶏湯
・【3】夏の保養食:チュオタン
・【4】夏の養生茶:五味子茶
・【5】夏の発酵ドリンク:シッケ
・【6】夏の伝統デザートドリンク

【1】夏の保養食:蓮の葉ごはん(연잎밥)

蓮の葉ごはん(ヨニッパプ)は、もち米にナツメや栗、銀杏、松の実などを加え、蓮の葉で包んで蒸し上げる韓国の伝統料理です。

蒸すことで蓮の葉の爽やかな香りがご飯に移り、上品でやさしい風味が楽しめます。

もともとは寺院料理や精進料理とも関わりが深く、現在では健康志向の料理としても人気があります。特に暑さで食欲が落ちやすい夏には、体をいたわる保養食として親しまれています。

韓医学では、蓮の葉は古くから夏の養生に適した植物と考えられ、体にこもった熱や湿気を整えながら、暑さで弱った胃腸をいたわる食材として利用されてきました。蓮の葉茶として飲まれることも多く、蓮の実やもち米、ナツメなどと組み合わせることで、夏に不足しがちな栄養を補う料理として受け継がれています。

蓮の葉ごはんの起源には諸説ありますが、寺院料理や仏教文化の広がりとともに発展したと考えられています。蓮は泥の中から美しい花を咲かせることから、仏教では清らかさの象徴とされ、韓国でも神聖な植物として大切にされてきました。また、蓮の葉には食材を包み、香りを移す役割があるため、昔から蒸し料理にも広く利用されています。

現在でも全羅北道・金堤(キムジェ)や忠清南道・扶余(プヨ)など蓮の名所として知られる地域では名物料理として親しまれ、近年ではソウルなどの韓定食店や健康志向のレストランでも提供されています。

🔽【動画】蓮の葉ごはん(ヨニッパプ)

<1-1> 東アジアに広がる蓮文化

蓮の葉を料理に利用する文化は韓国だけではありません。

  • 中国:荷葉飯(蓮の葉ご飯)や薬膳料理に利用
  • 台湾:蓮茶や蓮の実料理が日常的に親しまれる
  • ベトナム:蓮の葉包みご飯や蓮茶などが夏の定番
  • 日本:精進料理や薬膳料理で使われることがある

それぞれ調理法は異なりますが、「蓮を食と健康に生かす」という考え方は東アジア全体に共通する食文化の一つとなっています。

【2】夏の滋養食:参鶏湯(サムゲタン/삼계탕)

参鶏湯(サムゲタン)は、若鶏の中にもち米、高麗人参、ナツメ、栗、松の実、にんにくなどを詰めてじっくり煮込む、韓国を代表する保養食です。

滋養豊かな食材を一度に味わえることから、「食べる漢方」と呼ばれることもあり、夏の体力づくりを目的として広く親しまれています。

韓国には「以熱治熱(イヨルチヨル)」という、「暑さには熱で立ち向かう」という養生思想があります。暑さで失われた体力を、温かく栄養価の高い料理で補うという考え方で、真夏でも熱々の参鶏湯を食べる文化が受け継がれてきました。

参鶏湯のルーツは、朝鮮時代から親しまれてきた鶏料理「ペクスク(鶏の水炊き)」にあると考えられています。現在のように高麗人参などの薬膳食材を加えたスタイルは20世紀以降に広まり、韓医学の「薬食同源」の考え方とともに、韓国を代表する夏の保養食となりました。

現在では家庭料理としてだけでなく、専門店でも提供され、夏になると行列ができるほど人気の料理です。

<2-1> 伏日(ポンナル)と夏の保養食文化

韓国では、旧暦の夏に訪れる「伏日(ポンナル)」に参鶏湯を食べる習慣があります。

伏日は、

  • 初伏(チョボク)
  • 中伏(チュンボク)
  • 末伏(マルボク)

の3日間があり、一年の中でも最も暑さが厳しい時期とされています。

日本では土用の丑の日にうなぎを食べる習慣がありますが、韓国ではこの伏日に参鶏湯を食べ、夏を乗り切る力を養います。

👉【関連記事】日本の夏を乗り切る知恵!伝統の暑気払い文化をたどる

<2-2>東アジアに共通する薬膳スープ文化

韓国の参鶏湯とよく比較される料理には次のようなものがあります。

  • 中国:高麗人参や漢方食材を使った薬膳鶏スープ
  • 台湾:麻油鶏(ごま油と生姜で煮込む滋養スープ)
  • 日本:薬膳料理店などで参鶏湯が提供されることもある

それぞれ味付けや使われる生薬は異なりますが、「鶏と薬膳食材で体力を養う」という考え方は東アジアに共通する養生文化の一つです。

【3】夏の保養食:チュオタン(추어탕/ドジョウ汁)

チュオタン(추어탕)は、ドジョウ(韓国語では主に「ミックラジ/미꾸라지」)をじっくり煮込んで作る韓国の伝統的な滋養スープです。骨までやわらかく煮たドジョウをすり潰し、えごまの粉やにんにく、ネギ、唐辛子などを加えて仕上げるため、濃厚でコクのある味わいが特徴です。

古くから農村では、田んぼや川で捕れたドジョウを貴重なたんぱく源として利用してきました。韓医学では、暑さで消耗した体力を補う夏の保養食として親しまれ、現在でも夏になると専門店を訪れる人が多くいます。

特に全羅北道・南原(ナムウォン)はチュオタンの本場として知られ、地域ごとに味付けや調理法の違いが受け継がれています。

<3-1> 東アジアに広がるドジョウ料理

ドジョウを滋養食として食べる文化は韓国だけではありません。

  • 中国:泥鳅湯(ドジョウのスープ)などの家庭料理や薬膳料理
  • 日本:江戸名物として知られるどじょう鍋
  • タイ:地方ではドジョウを使ったスープや揚げ料理が食べられる

地域によって調理法は異なりますが、「身近な淡水魚で栄養を補う」という知恵はアジア各地に共通しています。

【4】夏の養生茶:五味子茶(오미자차)

五味子茶(オミジャチャ)は、「五味子(オミジャ)」と呼ばれる赤い果実から作られる韓国の伝統茶です。

「甘味・酸味・苦味・辛味・塩味」の五つの味を持つことからその名が付けられ、鮮やかな赤色と爽やかな酸味が特徴です。暑い季節には冷やして飲むことも多く、韓国を代表する夏の伝統ドリンクの一つとして親しまれています。

韓医学では、古くから体調を整える養生茶として利用され、中国や韓国の薬膳文化の中でも重要な植物の一つとされています。

また、「五つの味」は陰陽五行思想とも結び付けられ、それぞれの味が体のバランスを整えるという考え方も受け継がれてきました。

🔽【動画】五味子茶(오미자차)

<4-1> 東アジアに広がる五味子文化

五味子は韓国だけでなく、東アジア各地で利用されています。

  • 中国:五味子茶や薬膳酒、漢方食材として広く利用
  • 日本:漢方薬の生薬として利用されることがある
  • ロシア極東地域:伝統的なハーブティーとして親しまれる

それぞれ用途は異なりますが、「五味子を健康維持に生かす」という文化は広い地域で受け継がれています。

【5】夏の発酵ドリンク:シッケ(식혜)

シッケ(식혜)は、麦芽ともち米から作られる韓国の伝統的な発酵飲料です。

やさしい甘みと、もち米の粒が入った素朴な味わいが特徴で、日本の甘酒に似ていますが、アルコールを含まず、冷やして飲むのが一般的です。

もともとは旧正月や結婚式などのお祝いの席で振る舞われる特別な飲み物でしたが、現在では韓国料理店で食後のデザートドリンクとして提供されたり、チムジルバン(韓国式サウナ)の定番ドリンクとして親しまれたりするなど、日常でも幅広く楽しまれています。

暑い季節には冷たいシッケが夏の風物詩となり、韓国のスーパーでは缶入りやペットボトル入りの商品も数多く販売されています。特別な日の飲み物から日常のリフレッシュドリンクへと、その楽しみ方は時代とともに広がり、今でも韓国を代表する伝統飲料として愛され続けています。

<5-1>シッケの種類と地域ごとの特徴

韓国では、地域の気候や特産品を生かしたさまざまなシッケが作られています。

「その土地で採れる食材を発酵飲料にも取り入れる」という知恵から生まれたもので、地域ごとに風味や楽しみ方が異なります。

地域・種類地域ならではの理由特徴おすすめの季節
安東シッケ(慶尚道)古くから保存食文化が発達し、大根や唐辛子を使った料理が多かったため甘さの中にほんのり辛味があり、食後にもさっぱり飲める春~夏・冬
蓮の葉シッケ(江原道)湖や湿地で蓮が採れ、夏の養生食材として利用されてきたため爽やかな香りとすっきりした後味
カボチャシッケ(京畿道)カボチャの栽培が盛んで、収穫した実を余すことなく活用したため自然な甘みがあり栄養価も高い秋~冬
トウモロコシシッケ夏に収穫されるトウモロコシを使った季節限定のアレンジ甘みが強く、夏の水分・エネルギー補給に人気
高麗人参シッケ(錦山・江華島など)高麗人参の名産地で、薬膳文化が根付いているため滋養強壮や疲労回復を目的に飲まれる秋~冬(疲労時は夏にも)

※カボチャや高麗人参入りは本来冬向きですが、疲労回復を目的に夏に飲まれることもあります。

1)安東シッケ(慶尚道)

安東では、大根と唐辛子粉を加えた少し珍しいシッケが親しまれています。

慶尚道は発酵食品や保存食文化が発達した地域として知られ、大根や唐辛子も日常的に使われてきました。その土地ならではの食材をシッケに取り入れたことで、甘さだけでなく、ほのかな辛味とシャキシャキした食感が楽しめる独自の味わいが生まれました。

2) 蓮の葉シッケ(江原道)

江原道では、蓮の葉を加えたシッケも見られます。

湿地や湖の多い地域では蓮が身近な植物であり、夏の養生食材としても利用されてきました。蓮の葉の爽やかな香りと清涼感が加わり、蒸し暑い季節にぴったりの一杯になります。

3) カボチャシッケ(京畿道)

京畿道では、収穫したカボチャを使ったシッケも作られています。

農産物が豊富な地域ならではのアレンジで、旬のカボチャを余すことなく活用した暮らしの知恵から生まれました。自然な甘みと栄養を同時に楽しめるシッケです。

4)高麗人参シッケ(錦山・江華島など)

高麗人参の産地では、高麗人参を加えたシッケも作られています。

特に忠清南道・「錦山(クムサン)」は韓国最大級の高麗人参の産地として知られ、江華島も古くから栽培が盛んな地域です。薬膳文化が根付く土地ならではのシッケとして、滋養強壮や疲労回復を目的に親しまれています。

▼韓国最大の高麗人参の栽培地「錦山:クムサン」

<5-2>世界に広がる発酵ドリンク文化

米を発酵させた飲み物は世界各地に存在します。

  • 日本:甘酒
  • 中国:酒醸(チューニャン)などの発酵米飲料
  • 東南アジア:米を利用した伝統的な発酵飲料

同じ米文化圏でも、発酵方法や飲み方にはそれぞれの地域らしさが見られます。

👉関連記事:暑さに負けない!腸から整える夏の習慣|世界の発酵飲料10選|各国の伝統ドリンクと歴史

【6】夏の伝統デザートドリンク:ファチェ(화채)

ファチェ(화채)は、韓国で古くから親しまれてきた夏の伝統的なデザートドリンクです。

季節の果物を冷たい飲み物に浮かべて楽しむのが特徴で、現在ではスイカや桃、イチゴ、ぶどうなどを使ったさまざまなファチェが作られています。見た目も涼やかで、暑い夏を彩る季節の風物詩として、多くの家庭で親しまれています。

その歴史は朝鮮王朝時代までさかのぼり、宮廷では果物や花びらを浮かべた美しい飲み物として楽しまれていました。当時は蜂蜜や五味子茶、花びらなどを組み合わせた上品な飲み物が多く、季節ごとの果物を味わう宮廷文化の一つでもありました。

現在では、家庭で気軽に作れる夏のデザートとして定着しており、韓国のカフェでもアレンジメニューが数多く提供されています。

<6-1>世界に広がるフルーツドリンク文化

果物を使った涼菓やデザートドリンクは、世界各地で親しまれています。

  • 中国:西瓜やライチなどを使った冷たい甘味や糖水(タンシュイ)
  • 日本:フルーツポンチやあんみつなど、果物を楽しむ夏の甘味
  • ベトナム:チェー(Chè)と呼ばれる果物や豆を使った冷たいデザート
  • タイ:ロートチョンや果物入りのココナッツデザート

それぞれ使う果物や甘味は異なりますが、「旬の果物で暑さを和らげる」という考え方はアジア各地に共通する夏の食文化です。

👉関連記事:世界の夏養生文化を味わう伝統スイーツ4選|台湾・ベトナム・インド・イラン

まとめ

韓国では、夏はただ暑さをしのぐ季節ではなく、「食べて体を養う季節」と考えられてきました。

暑い日にあえて温かい参鶏湯やチュオタンを食べて体力を補い、五味子茶やシッケ、ファチェで水分や栄養を取り入れながら体のバランスを整える――こうした食文化の背景には、韓医学の「薬食同源」や「以熱治熱」といった養生の考え方が息づいています。

また、同じシッケでも地域ごとに使われる食材が異なるように、その土地の気候や風土、特産品を生かして発展してきた点も韓国の食文化の大きな魅力です。

暑い夏を元気に過ごすための知恵は、世界各地の伝統文化の中にも数多く受け継がれています。韓国の保養食や伝統ドリンクを味わいながら、先人たちが育んできた「夏を健やかに乗り切る知恵」に触れてみてはいかがでしょうか。

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