世界の夏養生文化を味わう伝統スイーツ4選|台湾・ベトナム・インド・イラン

夏になると、冷たいスイーツが恋しくなります。

でも世界には、「暑いから冷たいものを食べる」というだけではない、その土地ならではの夏を健やかに過ごす知恵が受け継がれています。

湿度の高い台湾では、薬膳の考え方を取り入れたかき氷。ベトナムでは、豆やハスの実を使った食養生スイーツ。40℃を超える酷暑のインドでは、宮廷文化から広まった栄養豊かな冷菓。そして乾燥した暑さのイランでは、ローズウォーターの香りで涼を感じる世界最古級のシャーベット。

どれも単なる「夏のおやつ」ではなく、その土地の気候や歴史、人々の暮らしの中で育まれてきた”夏養生”の文化です。

今回は、そんな世界の伝統スイーツを通して、それぞれの国がどのように夏と向き合ってきたのかを旅してみましょう。美容やウェルネスのヒントは、意外にも昔ながらの食文化の中に隠れているのかもしれません。

目次

・【1】台湾|八寶冰(バーバオビン)
・【2】ベトナム|チェー
・【3】インド|ファルーダ(Falooda)
・【4】イラン|ファルデ(faloodeh)

1.台湾|八寶冰(バーバオビン)

🇹🇼 薬膳・美容の王様。中医学が育んだ「食べる養生」

台湾では、「薬は食事の延長にある」という中医学(中国伝統医学)の考え方が、今も暮らしの中に深く根付いています。

高温多湿の夏は、体に余分な「熱」や「湿」がたまりやすい季節と考えられ、その日の体調や季節に合わせて食材を選ぶ「食養生」が大切にされてきました。市場やデザート店で、仙草ゼリーや白きくらげ、緑豆、小豆を使った甘味を一年中見かけるのも、その文化の表れです。

そんな台湾の夏を代表する一杯が、八寶冰(バーバオビン)

「八つの宝」という名の通り、小豆、緑豆、ハトムギ、白きくらげ、仙草ゼリー、タロイモなどをかき氷に重ねた、まさに”食べる薬膳”ともいえる伝統スイーツです。

もちろん現代では「好きだから食べる」という人も多い一方で、使われる食材には、それぞれ体をいたわるという考え方が受け継がれています。例えば、緑豆は中医学で体の熱を和らげる食材として知られ、ハトムギは美容食材として人気があります。白きくらげはデザートとしてだけでなく、古くから潤いを補う食材として親しまれてきました。

日本のかき氷が”氷を楽しむ”文化だとすれば、八寶冰は「何を食べるか?」で体を整える文化。その違いこそが、この一杯の魅力なのです。

🔽【動画】台湾|八寶冰(Bao Bing)

2.ベトナム|チェー

🇻🇳 食養生スイーツ。暮らしに溶け込む、やさしい甘味

南北に長いベトナムでは気候も多様ですが、多くの地域で蒸し暑い季節が長く続きます。そんな土地で親しまれてきたのが「チェー(Chè)」。一つの料理名ではなく、豆やハスの実、果物、ゼリー、ココナッツミルクなどを使った甘いデザート全般を指す言葉で、その種類は数百ともいわれます。

チェーによく使われる緑豆や小豆、ハスの実、白きくらげなどは、単に甘くておいしいだけではなく、昔から滋養を補う食材として親しまれてきました。暑さで食欲が落ちる季節でも食べやすく、体をいたわる意味を込めて日常的に食卓へ上ります。

また、ベトナムでは地域によってチェーの姿も大きく異なります。北部では素朴な豆のチェーが多く、南部ではココナッツミルクやトロピカルフルーツをたっぷり使った華やかなチェーが人気。気候や食材の違いが、そのままデザート文化にも表れています。

植物性たんぱく質が豊富な豆類や、古くから滋養食として親しまれてきたハスの実、ミネラルを含むココナッツミルクなど、一杯の中には「おいしさ」と「養生」が自然に共存しています。

🔽【動画】Chè Hạt Sen(ハスの実のチェー)

3.インド|ファルーダ(Falooda)

🇮🇳 酷暑が生んだ、インドのご褒美デザート

インドでは地域によっては夏に40℃を超える日が珍しくありません。そんな厳しい暑さの中で愛されてきたのが「ファルーダ(Falooda)」です。

そのルーツは16世紀頃、ムガル帝国時代にペルシャから伝わった冷菓にあるとされ、宮廷料理として発展した後、庶民にも広まりました。現在では、ローズシロップ入りのミルクに、バジルシード、細い麺状のファルーダセブ、ナッツ、アイスクリームなどを重ねた、ボリュームたっぷりの夏の定番デザートとして親しまれています。

ここで特徴的なのが、バジルシードです。

日本ではまだあまり馴染みがありませんが、スイートバジルの種を水に浸すと、周囲に透明なゼリー状の膜ができ、ぷるぷるとした食感になります。東南アジアやインドでは古くから飲み物やデザートに使われ、暑い季節によく登場する食材です。

食物繊維を豊富に含み、水分を吸収すると大きく膨らむため、満足感を得やすいのも特徴。さらにナッツやミルクを合わせることで、ビタミンEやたんぱく質、カルシウムなども補えます。酷暑の中で失われがちなエネルギーをおいしく補う、先人たちの知恵が詰まった一杯といえるでしょう。

🔽【動画】インド|ファルーダ(Falooda)

4.イラン|ファルデ(ファールーデ)

🇮🇷 2000年以上続く、「香りで涼を味わう」文化

イラン南部の古都シーラーズ発祥とされる「ファルデ(faloodeh)」は、世界最古級の冷たいデザートともいわれています。その歴史は古代ペルシャ時代にまでさかのぼるともされ、氷を保存する「ヤフチャール(氷の貯蔵施設)」を利用して冷菓を楽しんでいたという記録も残っています。

ファールーデの最大の特徴は、シャーベットの中に入った細い半透明の麺をレモンやライム、ローズウォーターで香りづけしたシャーベットに合わせるという、世界でも珍しいスタイル。

小麦の麺ではなく、でんぷんを練って細く押し出したもので、春雨や葛切りを思わせる、つるりとした独特の食感を楽しめます。使われるでんぷんは小麦やコーンスターチなど地域や時代によって異なりますが、「香り・冷たさ・食感」を一緒に味わうという発想は、古代ペルシャから受け継がれてきたものです。

このデザートに欠かせないのがローズウォーター。ダマスクローズなどの花びらを蒸留して作られる芳香水で、ペルシャでは1000年以上前から料理や菓子、宗教儀式、香水づくりなど幅広く使われてきました。

中東ではバラは「香りの女王」とも呼ばれ、美しさや豊かさの象徴でもあります。ローズウォーターは肌に直接使われる化粧水として親しまれてきただけでなく、お菓子や飲み物に加えて香りを楽しむ文化も発展しました。

近年では、ローズの香りにはリラックス効果が期待されることを示す研究もあり、暑さで疲れた気分をやわらげる香りとしても人気があります。ファルデは冷たさだけではなく、「香りでも涼を感じる」という、ペルシャならではの美意識を味わえる一品なのです。

🔽【動画】イラン|ファルデ(faloodeh)

まとめ

夏の暑さは世界共通ですが、その向き合い方は国によって大きく異なります。

台湾では、中医学の「涼(体を冷やす性質)」と「熱(体を温める性質)」という考え方をもとに、季節や体調に合わせて食材を選ぶ食養生の文化が育まれました。ベトナムでは、暑いから冷たいものを食べるのではなく、暑さで消耗した体を食で整えるという発想が、チェーのような日常の甘味にも息づいています。

一方、40℃を超える酷暑に見舞われるインドでは、栄養や水分を補いながら涼をとるファルーダが親しまれ、乾燥した暑さのイランでは、ローズウォーターの香りや柑橘の酸味で心まで涼やかにするファルデが受け継がれてきました。

それぞれのスイーツは見た目も味わいも異なりますが、共通しているのは、「体を冷やすこと」だけが目的ではないということ。暑さで乱れがちな体調を整え、その土地の気候と上手に付き合うための知恵が、一杯のスイーツの中に息づいています。

現代では、ハトムギや白きくらげ、ハスの実、バジルシード、ローズウォーターなどの素材が、美容やウェルネスの観点からも注目されています。しかし、それらは流行のスーパーフードではなく、人々が長い年月をかけて暮らしの中で選び、受け継いできた食文化そのもの。

今年の夏は、世界の伝統スイーツを味わいながら、その一杯に込められた「夏養生」の知恵にも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか?

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